「最近疲れてない?」
10月のはじめ、子どもたちが寝たあとの静かな時間に、妻からそう聞かれました。確かに疲れている自覚はありました。ただ、続いた言葉のほうが私には効きました。
「息子に対して、イライラしている場面が多いように感じる」
自分では、息子にイライラしているつもりはほとんどありませんでした。疲れの自覚はあるのに、イライラの自覚はない。この食い違いが気になって、その夜は妻とゆっくり話し合うことになりました。この記事は、その会話で気づいたことの記録です。
前提として、わが家は1歳半の息子と、今年9月に生まれた娘の4人家族で、私はいま育休中です。娘が生まれてからは夜間の対応を当番制にして、お互いの疲れを毎日確認するようにしています。それでも、自分の疲れの正体までは、自分では見えていませんでした。
イライラではなく「無になる」——育児疲れのサインは自覚しづらい
妻に言われて振り返ってみて、思い当たることがありました。
私はふだん、「こうしてあげた方が息子に分かるのでは」と、いろいろ考えながら息子の世話をしています。ところが時々、その「考えること」をふっとやめて、「無」になっている瞬間があります。
多いのは食事の時間です。期待どおり、思っていたとおりの結果に進まないとき、フラストレーションが溜まっていきます。そして怒るのではなく、育児について考えることをやめてしまうのです。
妻が見ていた「イライラしている場面」は、たぶんこれだったのだと思います。声を荒げるタイプの疲れなら自分でも気づけます。でも、考えることを静かに手放すタイプの疲れは、本人には自覚しづらい。目の前の世話は続けているので、自分の中では「やれている」ことになってしまいます。横で見ている人のほうが先に気づく、というのはそういうことなのだと思います。
フラストレーションの源は、息子ではなく私の「理想」でした
では、なぜ食事のたびにフラストレーションが溜まるのか。妻と話しながら思い当たったのは、「たくさん食べてたくさん育つのが息子のいいところ」という私の考えを、息子に押し付けていたことでした。
息子はいま、好き嫌いが出てくると言われる時期に差しかかっています。「食べない日もあるのが当たり前」を前提に置けば、あまり食べなくてもフラストレーションは溜まらないはずです。なのに私は「よく食べる息子」を基準にしてしまっていました。息子が今までいい子すぎたぶん、私の中の理想が勝手に高くなっていたのです。
対照的なのが娘です。生まれたばかりの娘にはまだ理想の押し付けがなく、娘へのフラストレーションは特にありません。同じ親が、同じ家で、二人の子を見ている。それなのに片方にだけフラストレーションが溜まるのだとしたら、違いは子どもの側ではなく、私が勝手に積み上げた理想の側にあります。ここに気づけたのが、この夜いちばんの収穫でした。
二人で見ているのに、一人のときより疲れる理由
話し合いの中で、もうひとつ発見がありました。
一人で息子を見ているとき、息子はある程度こちらに合わせてくれます。私が疲れていそうだと、一人遊びを多めにしてくれる(それでも、いないいないばあを仕掛けてくることはありますが)。だから疲れている日は、少し手を抜けます。
ところが妻と二人で見ているときは、そうはいきません。私が息子に構わない時間を作ると、息子は授乳している妻のところへ「かまってかまって」と行ってしまいます。だから手を抜けないし、休めません。
「二人で見ているのに、一人のときより疲れが溜まる」と感じていたのは、これが原因ではないかと思います。大人の数が増えれば、そのぶん一人あたりの負担は減る——私もなんとなくそう思っていました。でも実際には、授乳のように代われない場面がある以上、「もう一人の大人がいるから休める」とは限りません。人手が増えれば楽になる、と単純にはいかないのが、二人育児の難しさなのかもしれません。
「前はできていたのに」は、ただの成長の一段階
今回の振り返りで、これからも忘れたくないと思ったことがあります。
イヤイヤ期と言われる時期に入れば、今までできていたことがスムーズにできなくなります。好き嫌いが出てくれば、今までよく食べていたものを食べなくなります。同じ子でも、成長の段階によって「できていたこと」ができなくなるのは自然なことです。
それなのに、前にできていた姿をそのまま理想にしてしまうと、ただの成長の一段階が、こちらのフラストレーションと疲れに変わってしまいます。「前はできていたのに」という感覚は、子どもを見ているようでいて、実は過去の子どもと比べているだけです。頭では分かっているつもりだったのに、日々の世話の中ではあっさり忘れていました。だからこそ、一度気づいて終わりではなく、定期的に見直した方がいいと思いました。
そしてこれは、第2子にも同じことが起きます。第1子でうまくいった経験は、そのまま第2子への「理想」になりやすい。娘でそれがうまくいかなかったとき、同じようにフラストレーションや疲れとして出てしまうでしょう。息子との比較で、無意識に娘へ理想を押し付けることもありえます。子どもが2人になったからこそ、意識して振り返りが必要だと感じています。
まとめ:理想は定期的に点検する——私の場合
息子への理想の押し付けは、これを機に改善していくつもりです。特に食事では、「よく食べる息子」を取り戻そうとするのではなく、息子のいま好きなものを積極的に探していきたい。理想を下げるというより、いまの息子に合わせて理想を更新していく、という感覚でいます。
今回気づけたのは、妻の一言があったからです。わが家では夫婦で分担や考えをすり合わせる会話を続けてきましたが、その流れの中で出てきた「最近疲れてない?」がなければ、私は無になったまま、原因も分からずに疲れを溜め続けていたと思います。
これはあくまで私の場合の話で、誰にでも当てはまるとは限りません。ただ私は、これからも定期的に、自分の中の理想を点検していこうと思います。子どもが変わっていくのに、理想だけ置き去りにしないように。
※この記事は個人の体験記録です。お子さんの食事や発達について心配なことがある場合は、保健師さんや小児科など専門の窓口に相談してください。
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